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第八章 帰郷
愛する人が戻ってきたとき、たいていの人はすべてが終わったと安堵します。
しかし兵士にとって帰還とは、戦争から無事に生還して終わりというものではありません。
「This Is Your War」のマイケル・デュラン三等軍曹は、帰国して再び普通の状態に戻ることがいかに難しいか、自身のブログに綴っています。
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僕はハウ通りに面した大きな窓からぼんやり外を眺めていた。
いつもの道路。車。職場に向かう人、仕事帰りの人。母親は子供を乗せて家に帰る。何も爆発しない。自動車爆弾(VBIED)はここにはない。簡易爆弾(IED)もない。これが普通の世の中だ。この場所には死の危険などない。
嘘だらけの世界だ。
「ねえマイク、あなたはこれからどうしたい?」。サンディが僕に訊ねた。
僕はサクラメントの退役軍人センター(※)にいた。一週間前に初めて予約を入れた。
僕は自分を修復しなければいけない、だからここに来てるんだ。故郷に戻って一ヶ月ちょっと経っていた。もうここはイラクじゃない。僕はしばらくじっと、青いブラインド越しに窓の向こうを見つめていた。頭の中は空っぽだった。僕はどうしたいんだ?
いきなり様々な光景が稲妻のように脳裏を掠めた。
口にピストルをくわえたドク。野戦病院(CASH)で黒い遺体袋の中に横たわったデュプランティエ。その目はどんより濁り、スーパーに並ぶ死んだ魚みたいだった。衛生兵たちは彼の喉に管を挿し、なんとか生き返らせようとした。だけどほんとは、もう助からないとわかっていたのだ。狙撃兵の銃弾に胸を打ち砕かれたその瞬間に、彼は死んでいたのだから。僕は吐き気を催し、手で口を押さえながらよろよろとゴミ箱に近づいてかがみこんだ。戦闘用手袋についた吐しゃ物と胃酸の臭いは、任務が終わるまでずっと消えなかった。
「どうしたいって?」。ようやく僕が口を開いたとき、道路のどこかで十八輪のトレーラートラックがエンジンブレーキをかけて停まる音が聞こえた。僕は身体を左右に振りながらその質問を考えた。IEDの爆発する映像がまた頭に浮かんでくる。中尉の乗ったジープが、茶色と黒の混じった砂塵の雲に飲み込まれていく。
「俺は、だから、普通に戻りたいんだ。何が普通だか知らないけど……俺が普通だったことなんかあったのかね」
「とにかくな、ふざけた真似はよしてくれ、な? そこをまずはっきりしとこう」。僕は言った。「俺はさ、あんたなんかよりよっぽど大勢の人間を撃ち殺してんだよ。だから俺に向かって〝義務と名誉と祖国〟とかっていうおちゃらけはやめてくれ。もうたくさんなんだよ……ついでに教えてやろうか? そんなもの存在しないのさ。戦争は戦争でしかない。でな、何がどうなろうが構わねえのが戦争なんだよ」
僕はもう一度窓の外へ目をやった。でもそこに見えるのはハウ通りじゃない。僕の目に映っているのはルート・バーノンだった。僕らが毎日毎日、IEDを探して歩いた道だ。
しょっちゅう僕はうんざりして、ヘルメットを脱ぎハンヴィーのフロントガラスに投げつけた。さっさとIEDが爆発すればいいと思った。いつまでもびくついているより、一気にケリをつけてくれないか。
殺せよ、くそったれ、いいから殺せってんだ。この宙ぶらりんの状態を終わらせちまおうじゃねえか。僕はいつも思っていた。
……それで、これからどうするというんだ?
「俺はうちに帰りたい」
(抜粋)
※退役軍人センター
復員軍人のためのカウンセリングセンター
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